腰痛は、日本人の国民病ともいわれています。
統計上、4人に1人は腰痛に悩まされているのです。
腰痛の原因は、姿勢の悪さ、運動不足、老化、内臓疾患などさまざまですが、実は布団が大きく関係していることをご存知でしょうか。
正しい布団を使えば、腰痛を改善できる場合があるのです。
ここでは、腰に優しい布団の選び方を見ていきましょう。
寝姿勢が崩れると体に負担がかかる。体圧分散が重要
皆さんは、寝ている時の姿勢をどのくらい気にしていますか?
横になっている時は、立っている時と同じ姿勢を保つことが大切です。
起立時の正しい姿勢は、壁に背を向けて立った時に、頭・背中・お尻・かかと(+ふくらはぎ)が壁につく状態だとされています。
寝ている時には、これら4ヶ所が布団やマットレスについていればいいわけです。
正しい姿勢で寝ると、背骨はきれいなS字カーブを描き、最もリラックスした状態を保つことができます。
そのために重要なのが「体圧分散」です。
寝ている時は、以下の割合で体の各部位に体重がかかっています。
- 頭部:8%
- 背中:33%
- お尻(腰)44%
- 脚部:15%
頭部の体重は枕が、その他の部位は敷布団が支えています。
布団には全体重の92%がかかっているのです。
もし自分に合わない布団を使えば、理想的な体圧分散が崩れ、特定の部位に集中して体重がかかるでしょう。
その結果、体の歪みや痛み、圧迫による血行不良を引き起こしてしまうのです。
腰痛はその典型例だといえます。
目が覚めた時、体に痛みを感じるようなら、布団が合っていない可能性を疑わなければなりません。
とはいえ、最も眠りやすい姿勢は人によって異なりますし、睡眠中は何度も寝返りを打って姿勢が変わります。
万人に合う布団は存在しませんから、体型や腰痛も考慮して、自分に合う布団を見つけ出すことが大切なのです。
布団は適度な硬さが必要。柔らかすぎても硬すぎてもNG
布団を選ぶ時、最初に注目するべきなのは布団の硬さです。
「やっぱりフカフカの布団が1番」という人もいれば、「柔らかすぎると逆に眠りにくい」という人もいるでしょう。
腰痛持ちの人は、布団を敷かずに床で寝た方が楽になるという話もあります。
果たしてどれが正しいのでしょうか。
結論を最初に言うと、「適度な硬さのある布団」が1番です。
柔らかすぎても硬すぎても、体に負担がかかってしまいます。
柔らかすぎるor硬すぎることが、どのような影響を及ぼすのかを知っておきましょう。
柔らかすぎる布団
あまりに柔らかい布団は、バランスよく体圧を分散することができません。
そのため、最も重い部分である腰(お尻)が沈み込んでしまいます。
S字カーブどころか、Vの字のような姿勢になってしまうのです。
このような姿勢で寝ていると、背骨や腰に大きな負担がかかります。
しかも、寝返りをうまく打てないため、血行不良や褥瘡(床ずれ)を引き起こすこともあるのです。
腰痛に悩む人なら、避けなければならない布団だといえるでしょう。
いわゆる低反発マットレスも同じです。
硬すぎる布団
硬すぎる布団で寝ると、体がほとんど布団に沈み込みません。
いわゆる「せんべい布団」や、床に直接寝た場合も同じです。
これは一応、S字カーブを保って寝ることができるので、一時的に腰痛が楽になることもあるでしょう。
しかし、体が沈み込まない分、布団に接する頭・背中・お尻・脚部に大きな負担がかかります。
その結果、しびれや痛み、血行不良を引き起こすのです。
また、寝返りを打って横向きの姿勢になると、体をうまく支えることができません。
形状の変化しない硬い布団では、さまざまな姿勢に対応することができないからです。
このように、布団は柔らかすぎても硬すぎても悪影響を及ぼします。
体圧を分散できる適度な硬さの布団を選び、正しい寝姿勢を保持しましょう。
ベッドと布団はどちらでもいい? 結局は硬さが重要
ベッドにするか布団にするかは、寝具選びで迷いやすいポイントの1つです。
現在は畳敷きの部屋が減少し、フローリングの部屋が増えているため、ベッドを選ぶ人も多いでしょう。
腰痛対策を重視する場合、どちらが適切なのでしょうか。
ベッドの特徴
ベッドは布団の上げ下ろしが必要ないため、腰痛に悩む人にとってはありがたい存在です。
布団に比べると起き上がるのが楽な点も見逃せません。
ただ、天日干しの難しさや部屋の一部を占拠してしまうことなど、腰痛対策以外の点ではデメリットも目立ちます。
布団の特徴
布団は床の上に直接敷くため、床の硬さでほどよく体を支えることができます。
「布団の方が硬めだから」といって、腰痛の人に布団をすすめる医師や整体師もいるようです。
しかし、最近はさまざまな布団やマットレスが開発されており、一概には言えません。
上げ下ろしの大変さもデメリットです。
結局のところ、どちらにもメリットとデメリットがあります。
腰痛対策の観点からは、ベッドと布団に優劣をつけることはできません。
どちらを選ぶにしても、大切なのは「正しい寝姿勢が保てるかどうか」です。
適度な硬さがあり、適切な体圧分散が可能なものを選びましょう。
布団を購入する時は試し寝をしよう。腰痛のタイプにも注目
布団選びの重要性は、ここまでで理解していただけたと思います。
それでは、実際に布団を選ぶ際の、より具体的な判断基準を紹介しましょう。
硬さの判断基準1:ニュートン
布団の硬さの単位には、ニュートン(N)が使われます。
硬め・柔らかめの基準は以下の通りです。
- 100N~:硬め(いわゆる高反発)
- 60N~100N:普通
- ~60N:柔らかめ
この数値は、あくまでも大まかな区分です。
同じ腰痛持ちでも、100Nの高反発布団が適している人もいれば、80Nの一般的な布団が最適という人もいるでしょう。
今使っている布団のN値がわかるなら、それを参考に新しい布団を探してください。
硬さの判断基準2:試し寝
布団やベッドを購入する時は、必ず試し寝をしてください。
カタログ上のスペックやアピールポイントだけでは、自分に合っているか判断できないからです。
家族や店員に寝姿勢を確認してもらい、きれいなS字カーブが描けているかをチェックしましょう。
また、寝返りが打ちやすいかも重要です。
両手を胸に置き、膝を立てた状態で左右に転がってみましょう。
力を入れなくてもスムーズに寝返りが打てるなら、自分に適した布団である可能性は高いといえます。
なお、布団の硬さは一定ではありません。
使っているうちに、体の重みによって柔らかくなります。
購入時は、理想より多少硬い程度の布団を選んだ方がいいでしょう。
布団の寿命は5年程度なので、定期的に買い換えることをおすすめします。
硬さの判断基準3:腰痛のタイプ
腰痛の原因はさまざまで、どの姿勢が最もつらいのかも人によって異なります。
症状によっては、少し柔らかめor硬めの布団を選んだ方がいい場合もあるのです。
後ろに反ると腰が痛い場合
腰椎分離症や脊柱管狭窄症の患者が該当します。
寝返りの回数を減らして患部を刺激しないことが大切なので、柔らかめの布団がおすすめです。
横向きに丸まって寝られる布団を探しましょう。
前かがみになると腰が痛い場合
椎間板ヘルニアや筋・筋膜性腰痛の患者が該当します。
体をまっすぐに伸ばして寝る必要があるので、やや硬めの布団を使いましょう。
まとめ:自分に合った布団を選び、腰痛を改善しよう
腰痛が悪化すれば生活に支障をきたし、寝たきりになってしまうこともあります。
「デスクワーク中心だから仕方ない」「この年齢なら誰でも腰痛になるだろう」とあきらめる前に、使っている布団を見直してみましょう。
それまでの苦痛が嘘のように、腰痛が改善されるかもしれません。
本当に自分に合った布団を選び、腰痛から卒業してください。